「多くを知るより、味わうこと」


わたしの管区にフランスから会員を迎えたことについて以前書いたことがある。わたしは縁あって彼女と共に3日間の旅にでた。旅先はわたしの故郷、京都である。三日間をどう過ごすか、まず、その会員にあって希望を聞いた。彼女は多くをまわるのではなく、少しでいいからゆっくり味わいたいという。つまり、聖イグナチオの霊操2番「実に魂を満たし、満足させるのは多くを知ることよりも、物事を内的に深く感得し味わうことに他ならないからである」(イグナチオ・で・ロヨラ著 門脇佳吉訳「霊操」岩波文庫)をこの旅の中で実践しようというのだろう。それでわたしは、1日目は誰もが知っている場所を選んで(話の種に必要なことである)、ウォーミングアップにし、2日目、3日目は観光ルートにのらないユニークな味わいのある案内案を考えた。概論から入って、各論にもっていったともいえよう。この案内案はフランスからの会員を満足させたようだ。まさに霊操2番「多くを知るより、味わうこと」の目的を果たしたといえよう。


たった3日間だったが、「多くを知るより、味わう」の旅は思いのほか豊かな日本文化との出会いだった。彼女は異質なものとの出会いの喜びを味わっていたのではなかろうか。


Yoshiko Nomoto