2月のはじめに

少しぬくもりのある朝、
庭の大根を抜きに行った時のこと。
ほとけのざ”の葉のかげから、一匹の蝶が飛びだしました。
よくみると、蛹から出てきたばかりのようで、
初々しく黄色の翅がたとえようもなく美しかった。
蝶は、土の上に横たわっていた。
春はまだなのに、この二月に、はて、生き延びるであろうか?
そう思いつつ、そっとしておいた。
しばらくして、蝶は私の目の前でひらひらと舞っていた。
そして、いつの間にか姿を消した。どこへ行ったのだろう?
二月二日夜、シスターあかねの訃報が届いた。
受話器を持つ手がふるえ、私はことばなく息を飲んだ。
黄色の蝶、初々しい、美しい蝶(プシケー)は希望の色だった。
愛するアフリカの大地から、国境も海も死も超えて、
プシケーが飛んで来て、舞っていたのです。
そうか、あれはあかねさんの魂(プシケー)だったのか・・・


Yuriko Kashiwase