シネエッセイ

日本の女性監督のパイオニアで記録映画の第1人者と言われる羽田澄子氏の作品「遥かなるふるさと旅順・大連」を見る機会を得ました。羽田氏は旧満州の大連市で生まれ、日本でも暮らす時もありますが、敗戦を大連で迎えられた方です。



羽田氏は今年85歳を迎えられた方です。
氏は2009年の秋に軍港旅順が全面開放した好機を見逃さず長年封鎖されたこの地を訪れご自身の人生のリフレクションとしてこの時代を見つめています。羽田氏を含め旅順、大連に住んでいた日本人の多くが、この2つの場所を[懐かしいふるさと]で終わらない現実として時間を経た今新たに出会うのではないでしょうか。日本統治化時代の日本人が、当時知ることの出来ないもので、時間を経た今故に理解できる振り返りがなされています。



今日、旅順・大連をふるさととして懐かしむ人々の多くが他界しています。そして新しい旅順・大連は目覚ましい発展をしています。シネエッセイの味わいで淡々とした語りで進む作品を見ながら羽田氏の人生に於ける内的作業の新しい出発を感じた次第です。なお、終戦と同時に住み慣れたふるさとを奪われた方々の苦しみや沢山の死者を思う時、まさに東日本大震災で全てを失った方々の痛み苦しみ、沢山亡くなられた方々と重なるものを感じました。



Taeko H